3月20日付 神戸新聞の社会面をご紹介します。
「極めて不当」「違法」―。兵庫県の斎藤元彦知事らへの告発文書問題を調査した第三者委員会の報告書には、公益通報者保護やパワハラ疑惑に関する厳しい評価が並びました。知事と一部幹部が同質化し、組織の分断が進んだ点についても指摘され、藤本久俊委員長は「県政の停滞で被害を受けるのは県民」と述べ、組織風土の改善を求めました。
報告書提出後の19日午後、第三者委の弁護士6人が会見。藤本委員長は、264ページに及ぶ報告書の内容を説明しました。
公益通報の取り扱いやパワハラ疑惑に関する共通の背景として、県の組織風土の問題が挙げられました。その一つが「コミュニケーションギャップ」です。報告書によると、斎藤知事が直接やりとりする職員は「新県政推進室」の一部に限られ、主要メンバーは過剰な要求にも応じ、理不尽な叱責にも反論しない状況だったと指摘。こうした同質化した集団が組織の分断を招き、自由闊達な議論を妨げたと結論づけました。
また、知事と職員の間で認識の齟齬が生じ、知事自身への批判を冷静に受け止められなくなったと分析。同質化した幹部らだけで告発文書の対応を行ったため、「公益通報として取り扱う発想は生まれなかった」とし、拙速な対応につながったと指摘しました。
斎藤知事は、公益通報者保護法違反の可能性があるとした県議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書について、「違法の可能性があるということは適法の可能性もある」「パワハラに該当するかは司法が判断すること」などと反論しました。
第三者委の報告書は、こうした知事の発言について「正面から受け止める姿勢を示していない」と批判。組織のトップには複眼的な思考が不可欠であり、「幹部は感情をコントロールし、公式の場では人を傷つける発言を慎むべきだ」と求めました。
会見で藤本委員長は、県組織のあり方について、多様な意見を柔軟に取り入れる重要性を強調。「正しい意見には従うのが民主主義の基礎。人の意見をよく聞き、吟味し、違う方向に進むことを恐れない姿勢が必要だ」と提言しました。