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2025.8.30

影響力増すアテンション・エコノミー/問われる民主主義の行方/慶応義塾大学大学院 山本龍彦教授に聞く

2025年8月30日付の公明新聞4面から、「アテンション・エコノミー」と民主主義の行方についてご紹介します。

今、SNSや動画サイトなどで、私たちの「注目(アテンション)」が集まり、そこに大きな価値が生まれる「アテンション・エコノミー」の存在感が年々強まっています。たとえば、驚くような話題、自分の趣味や考え方にぴったりの情報だけがどんどん流れてきて、つい見入ってしまう、そんな生活になっていませんか?

 

山本龍彦教授(慶應義塾大学大学院)は、この仕組みが最近の参院選でも投票行動に大きな影響を与えたと指摘しています。

アテンション・エコノミーの特徴は、AIが私たちの「好み」や「癖」を分析し、見たい情報ばかりを優先して表示させてしまうことです。その結果、自分の考えと似た内容の情報ばかり集まり、大事なニュースや多様な意見が目に入りにくくなっています。さらに、刺激的な内容や誤情報、誹謗中傷なども拡散しやすい構造になっていると、教授は指摘します。

今回の参院選でも、SNSや動画の拡散力は無視できません。伝統的な組織や団体の影響力が弱まる中で、個人のネット活動が選挙結果を左右するケースも目立ちました。ただ、SNSで流れる情報は、必ずしも公平・公正とは限らず、時に情熱や感情が優先され、理性的な議論が難しくなるという側面もあります。

 

 

若い世代ほどテレビや新聞よりもSNSで情報を得る人が増えるなか、民主主義は新しい試練に直面しています。政治家や政党も「注目されること」を意識しすぎると、熱い演説や対立煽りが目立つ一方で、政策の中身より見え方や“盛り上がり”が重視される恐れがあると警鐘を鳴らしています。

情報の信頼性については、テレビや新聞などは倫理的なルールがありますが、SNSでは“目立つこと”が最優先になり、事実かどうかよりも“広がるかどうか”が重視されがちです。生成AIが広がり、短時間で大量の偽動画や偽画像が出回る時代には、さらに見分ける力が求められます。

 

 

では、こうした状況で私たちができることは何でしょうか。山本教授は「情報的健康=情報の摂りすぎや偏りに気を付け、信頼できる情報をバランスよく摂ること」の大切さを訴えます。ヨーロッパでは、個人データの保護や、信頼できる情報を目立たせる政策が進められており、日本でも個人情報の取り扱いをしっかり管理するルール作りが急務だと指摘されています。
私たちは、“だまされやすい”時代を生きています。でも、冷静に情報を選び、多様な意見に耳を傾け、コミュニティや地域、そして社会全体の対話を大切にすることで、成熟した民主主義を少しずつ築いていきたいものです。私も皆さんとともに、そんな社会をめざして取り組んでまいります。