NOTICE
活動報告・お知らせ

2023.6.20

定例の研修会で北村大阪大学大学院教授が講演 少子高齢化社会における自治体連携のあり方を探る

県議会公明党は、6月20日、県庁内で定例の研修会を開き、大阪大学大学院法学研究科の北村亘教授が「少子高齢化社会における自治体連携」をテーマに講演しました。

北村教授は、はじめにデータを示しながら、日本の高齢化率がヨーロッパやアメリカに比べて、24年間で7%から14%に倍加しており、シンガポール、中国などアジア諸国も人口減少が進んでいることを指摘。また、増田寛也元総務大臣の著書を参考に、消滅する可能性が非常に高い自治体が多くあることを示しました。さらに、今後重要な労働力と期待されている外国人労働者数が急増しており、特に、中国をはじめフィリピン、ベトナムからの技能実習生が増えており、言語面での対応が喫緊の課題で、これらに伴い行政需要も増えることを説明しました。

それとともに、行政側の公務員数の推移について「職員年齢構成のゆがみが出てきている。兵庫県も公務員数が減っているが業務が増えている。各市町の道路やトンネルなど社会資本の老朽化が進んでいる」と述べ、少子高齢化、人口減少、労働力不足などが進む社会や課題を抱える地方自治体の大きな変化に対応する一つの方途としてスマート自治体への転換の必要性を解説。

スマート自治体の実現で、▼人口減少が進んでも自治体が持続可能な形で行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持できる▼自治体職員を単純事務作業から解放し、より付加価値のある業務が担当できる▼ベテラン職員の経験を蓄積・代替し職員の能力、経験年数にかかわらずスムーズに事務処理できるようにする、といった姿が期待できることを話しました。

北村教授は、スマート自治体の実現には今後AI(人工知能)やRPA(PC上で行う業務をロボットで自動化するテクノロジー)が寄与すると強調。外国での活用事例として、太陽光発電で動くスイスでの除草作業用ロボットやドバイ警察で採用されている道案内や罰金の受け取りもできるロボットの活用。また、愛知県で実施された人口知能によるケアプランの作成支援などの効果と改善すべき点などを提示しました。

その上で北村教授は「現段階ではAI導入は『働き方改革』や『業務プロセスの効率化』への効果が高いと考えられ、自治体職員の労働環境にはプラス面が大きいと言える。本格導入の際には、コスト的に見ると大量の退職者などの人海戦術で業務遂行するほうが安くなる場合もある。置換ができたときの単独余剰人員の処遇も重要」との考えを述べました。

※国のデータによると、AIの導入状況は市町村では2割、AI機能別導入では「音声認識(議事録の作成)」、「文字認識」、「チャットボットによる応答業務」の3分野はすべての規模の自治体で導入が進んでいるが、業務効率化に寄与する「マッチング」、「最適解表示」、「画像・動画認識」、「数値予測」の4分野での導入はまだ少ないという状況にあります。

県内での市町連携に係る意見交換会(県内9圏域39市町長・副市長等対象)が昨年8月から10月にかけて行われたことを挙げ、その中で、さらなる連携推進の必要性を示したのは37団体で、圏域を超える連携を懸念する団体もあったことを説明。また、具体的な事務での費用対効果の検討や構成団体の利害調整の難しさを主張する意見があったことなどを紹介しました。

これについて北村教授は「自治体連携は難しい。需要は増えているが担い手が減っており、結果AI等に頼らざるを得なくなっている。県の課題は都市度も低く、持続可能性も低い市町をどのように支えていくかということ。地理的な近接だけではなく市町の特徴を踏まえた連携の必要がある」と自らの見解を示しました。さらに「業務用実施手法の可視化で同じ課題があるといったような議論ができる。AI・RPAなどの導入の前に、それぞれの自治体で各部署の業務内容、実施手法の可視化、標準作業、手続きの確定が重要となる。その上で、連携して行政サービスを行い、均等な費用負担、業務の標準化・共通化などが不可欠になってくる」と付け加えました。

最後に、北村教授は、少子高齢化をはじめとする様々な課題に取り組んでいる地方議会の議員の役割について「市民参加が進むほど議員の存在感が薄くなる傾向にある。しかし二元代表制のもとでの地方議員の権限は大きく、首長の行政運営をチェックする重要な責任がある。審議会ではチェックできない。皆さんは、県と地元地域の発展を目指して日々尽力している。県民に対して、各議員の活動をもっとPRした方がいい」と述べ、公明党県議の今後の活躍に大きな期待を寄せていただきました。

このあとの質疑では、各県議からAIなどの導入への首長の役割、自治体間の連携の推進による一律化と各自治体の特性の維持・展開のバランスなどについて意見交換しました。