●兵庫第三者委員会 知事の資質欠如は明らかだ
兵庫県が設けた中立公正な調査機関が、内部告発への県の対応は違法だと断じた。斎藤元彦知事の責任は免れず、自ら進退を決断すべきだ。
斎藤氏のパワハラ疑惑や元県幹部の内部告発への対応について、第三者委員会が報告書を公表。「机をたたいて叱責」「夜間・休日のチャットでの叱責・指示が長期間継続」といった行為は「パワハラに当たる」と認定し、「極めて不適切」「知事の威圧的な行為は職員を萎縮させる」と非難した。
さらに、元県幹部の告発は公益通報に該当すると判断し、知事の指示による告発者の特定や懲戒処分は「違法」「無効」と指摘した。
この問題では、県議会の百条委員会もパワハラ行為や県の対応の違法性を指摘したが、斎藤氏は「一つの見解」として一顧だにせず、告発者を貶めるような発言までしていた。
第三者委員会は県の要請で設置された独立性の高い調査機関であり、その調査結果は極めて重い。元県幹部は昨年7月に死亡し、自殺とみられる。斎藤氏は懲戒処分を撤回し、遺族に謝罪すべきだ。これ以上、人ごとのような対応を続けるのは許されない。
公益通報制度の導入後、他の自治体や企業でも告発者への不利益な対応が相次いだため、国会では懲戒処分を行った組織・個人双方に刑事罰を科す法整備が進んでいる。
斎藤氏は行政のトップであると同時に、告発された当事者でもある。「告発者潰し」が許されないのは当然だが、公益通報制度を軽視する発言を続ける姿勢は、公職者としての資質を疑わせる。
昨年11月の出直し選で再選したことを、知事に留まる根拠にしているのかもしれない。しかし、選挙戦では「斎藤氏は悪くない」という言説がSNSで広まり、終盤の追い風となったが、知事側のPR会社が公職選挙法違反容疑で強制捜査を受けている。「斎藤氏は悪くない」という前提が崩れた今、選挙の妥当性も問われよう。
兵庫県では、斎藤氏を陥れた「黒幕」だとSNSなどで中傷された百条委の前県議も死亡。自殺とみられる。県政の混乱が1年に及び、死者が相次ぐ状況は異常と言わざるを得ない。